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ナフサショックとは?建築資材不足と住宅建築への影響をわかりやすく解説

ナフサショックとは何か? 建築業界を襲う見えない原材料不足

最近、建築業界で「ナフサショック」という言葉を耳にするようになりました。

正直なところ、私は昭和生まれですが「ナフサ」という言葉を今回初めて意識しました。学校で習った記憶もありませんし、一般の生活で耳にする機会もほとんどありません。

しかし調べてみると、このナフサという物質は現代社会を支える極めて重要な原料でした。

そして今、その供給不足や価格高騰が建築業界にも大きな影響を与え始めています。


ナフサとは何か?

ナフサ(Naphtha)は原油を精製する過程で得られる石油製品の一種です。

ガソリンより少し重く、灯油より軽い成分で構成されており、そのまま燃料として使われることもありますが、主な用途は石油化学製品の原料です。

簡単に言えば、

プラスチックの元になる液体

と考えると分かりやすいでしょう。

私たちの身の回りにある樹脂製品の多くは、最終的にたどるとナフサが出発点になっています。


建築資材の多くはナフサ由来

建築現場を見渡すと、ナフサを原料とする製品が想像以上に多いことに驚かされます。

例えば、

  • 塩化ビニル管(VP・VU管)
  • 給排水用樹脂配管
  • 電線被覆材
  • 発泡スチロール断熱材
  • 押出法ポリスチレンフォーム断熱材
  • ウレタンフォーム断熱材
  • 防湿シート
  • 気密シート
  • 透湿防水シート
  • コーキング材(シーリング材)
  • 接着剤
  • FRP製品
  • 樹脂サッシ
  • ポリエチレンフィルム
  • 養生シート
  • 建築用テープ類
  • 各種樹脂部品

などが挙げられます。

住宅一棟を建てる場合でも、実はかなりの割合で石油化学製品が使用されています。

木造住宅だからといって「木だけ」でできているわけではありません。

塗料業界が特に深刻と言われる理由

塗料・塗装業界が特に影響を受ける理由

塗料は単なる「色のついた液体」ではありません。

一般的な建築用塗料は、

  • 樹脂(バインダー)
  • 顔料
  • 溶剤
  • 添加剤

によって構成されています。

このうち特に重要なのが樹脂です。

塗膜の強度や耐久性、防水性を決定する「骨格」の役割を担っています。


ナフサから塗料ができるまで

塗料用樹脂の多くは石油化学製品です。

流れを単純化すると、

原油
↓
ナフサ
↓
エチレン・プロピレン・ベンゼンなど
↓
合成樹脂原料
↓
アクリル樹脂・ウレタン樹脂・エポキシ樹脂・シリコン樹脂
↓
建築用塗料

となります。

つまり、

塗料はナフサから作られた樹脂の集合体

と言っても大げさではありません。


建築現場で使われる塗料はほぼ石油化学製品

住宅や建築物で使われる代表的な塗料には、

アクリル塗料

安価で扱いやすい。

原料の多くがナフサ由来。

ウレタン塗料

外壁や木部で広く利用。

ポリウレタン樹脂は石油化学製品。

シリコン塗料

現在の主流。

シリコン樹脂そのものはケイ素系ですが、多くの原料や添加剤が石油化学由来。

フッ素塗料

高耐久型。

製造工程で多数の石油化学原料を使用。

エポキシ塗料

防錆塗装などで使用。

原料はベンゼン系化学品から製造される。


なぜ塗料不足が起きるのか

問題は塗料そのものではありません。

原料となる

  • エチレン
  • プロピレン
  • ベンゼン
  • トルエン
  • キシレン

などの供給が滞ることです。

すると、

樹脂メーカー
↓
塗料メーカー
↓
塗装業者
↓
建築現場

という流れで影響が伝わります。

その結果、

  • 塗料価格上昇
  • 納期長期化
  • 特定色の欠品
  • 代替品への変更

が発生します。


塗装は工事の最後に来るため影響が大きい

塗装工事は建築工程の後半です。

そのため塗料が届かないと、

  • 足場を解体できない
  • 完了検査を受けられない
  • 引渡しが遅れる

という事態になりかねません。

住宅一棟の工事全体から見れば塗料代はそれほど大きくなくても、

最後の1缶が届かないだけで建物全体が完成しない

という厄介な特徴があります。


ナフサはどうやって作られるのか

ナフサは原油から作られます。

工程を単純化すると次のようになります。

原油 → 精製→ナフサ→ エチレン・プロピレン→ 樹脂製品 → 建築資材

  1. 原油を精油所へ運ぶ
  2. 蒸留装置で成分ごとに分離
  3. ナフサを取り出す
  4. ナフサを高温分解(ナフサクラッカー)
  5. エチレンやプロピレンを製造
  6. プラスチック原料を製造
  7. 建築資材へ加工

つまり、

住宅の断熱材や配管の原点をたどると、最終的には原油に行き着く

ということです。


なぜ今「ナフサショック」なのか

近年は国際情勢の変化やエネルギー市場の混乱によって石油化学製品の供給が不安定になっています。

建築業界では、

  • 納期遅延
  • 材料不足
  • 価格上昇
  • 代替品への変更

などが発生しやすくなっています。

特に工期が厳しく管理される現場では、たった一つの部材が入荷しないだけで工程全体が止まることもあります。


四号特例縮小の中での追い打ち

建築確認制度の改正により、木造住宅を取り巻く環境は大きく変化しています。

図面作成や申請業務は増加し、設計者・施工者ともに対応に追われています。

その状況を漫画『あしたのジョー』で例えるなら、

「力石の左フックを受けながら何とか立っている状態」

だったところへ、

今回のナフサショックは

「さらにアッパーカットが飛んできた」

ような印象すらあります。

もちろん業界は工夫しながら対応しています。

代替材料の検討や工程調整、早期発注など、現場レベルでできる努力は行われています。

しかし供給そのものが不足する状況では、個人や一企業の努力だけで解決できる問題ではありません。


今後どう対応すべきか

現実的な対応策としては、

  • 資材の早期発注
  • 代替製品の事前検討
  • 工程の柔軟な見直し
  • 発注者への情報共有
  • 十分な工期確保

などが考えられます。

ただし、これらは影響を緩和する手段であって根本的解決ではありません。

原材料供給の問題は国際的なエネルギー事情や物流にも関係しており、一企業や個人がコントロールできる範囲を超えています。


国土交通省も柔軟対応を要請

こうした資材不足の影響を受け、国土交通省では完了検査等において一定の柔軟な運用を行うよう各特定行政庁等へ通知しています。

例えば、設備機器や一部資材の納入遅延により工事完了が遅れるケースについて、条件付きで検査対応を認める運用などが示されています。

詳細については国土交通省の通知をご確認ください。

中東情勢に係る住宅分野情報提供窓口/国土交通省

完了検査の柔軟な運用について/国通知(令和8年4月 13 日付け国住指第 38 号、国住参建第 239 号)


まとめ

ナフサは一般にはあまり知られていませんが、現代の住宅建築を支える重要な基礎原料です。

断熱材、配管、シーリング材、防水シートなど、多くの建築資材がナフサ由来の石油化学製品によって作られています。

今回のナフサショックは、単なる価格上昇ではなく、建築工程そのものに影響を及ぼしかねない問題です。

現場ではさまざまな工夫が続けられていますが、その対応力にも限界があります。

建築に関わるすべての立場が、これまで以上に余裕を持った工程計画と情報共有を行うことが求められているのかもしれません。